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201510/20

12歳になると少女からペニスが生えてくる村 ― 「ゲヴェドース」と呼ばれる人々の謎

思春期を迎えると、私たち人間の身体には様々な変化が訪れる。身長や体重の変化、体毛が生え声変わりするなど、男女それぞれが第二次性徴を経験する。
しかし今回紹介するのは「思春期に少女から少年に変わる」という不思議な現象だ。9月20日の「BBC」などが報じられた内容をお伝えしたい。
■「12歳になったらペニス」の意味は!? ゲヴェドースとは何か?
冒頭にあるように思春期による心身の変化は至って普通である。しかしドミニカ共和国の南西に位置するサリナス村では、人生がひっくり返るような思春期を迎える少年少女が存在するのだ。
 この村に住む少年の一部にとって思春期とは男性器が生えてくる時期なのだ。サリナス村で生まれる子どもたちの一部は男性器を持たずに生まれ、少女として育てられるのだが彼らはやがて少年に変わってゆく。
 我が耳を疑いたくなるような話だが、この現象はサリナス村の住民たちにとっては珍しい事ではない。こうした子どもたちを「ゲヴェドース」(12歳になると男性器が生えるの意)と呼んでいる。そう、この村ではゲヴェドースはそう珍しくはないのだ。

■ゲヴェドースが起こる不思議なメカニズムとは!?
 ゲヴェドースは「5a還元酵素」という酸素が足りずに起こる遺伝性の疾患を指している。通常は妊娠6週目から24週目にかけて、アンドロゲンシャワーと呼ばれる男性ホルモンのシャワーを浴び、胎児は男児になる。
 胎児の股間についた小さな突起が妊娠約8週間目頃から男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)によって膨らみ、男性器(ペニス)になっていくのだが、不思議なことにサリナス村の女性たちが生む新生児の多くはそのDHTの量に影響する5a還元酵素が完全に欠落しているのだ。
 この新生児は男性器、そして精巣を持たずに生まれるので性別判明の際に女児に間違われることが珍しくない。女児から男児に変わるのはテストステロンが急増する思春期であり、彼らの声が太く低くなるにつれて男性器が大きくなっていくという仕組みのようだ。
 サリナス村では約50人に1人の割合でゲヴェドースの子が生まれる。通常は7歳~12歳の間に身体の変化が始まるが、男性となったその後もほんの僅かに成人男性と違いが出てくるそうだ。その特徴はゲヴェドースの多くが薄い体毛(特に頭部)と睾丸が小さいというものなのである。

■ゲヴェドースの苦悩。周囲の反応は…
 24歳のジョニーはサリナス村で少女として育った多くの少年の1人だ。幼少期はフェリシタという名前で赤いドレスを着て学校へ通っていたが、ドレスや女の子用のオモチャには関心がなく、少年たちと一緒に遊ぶ事が楽しみだったという。さらにジョニーは7歳の時に男性器が大きくなり始めたが、それが彼にはとても幸せに感じられたとも言う。
また9歳のカーラの母親は、娘が5歳になった時にその身体の変化に気付き、周囲の少年たちもカーラを挑発するようになった。カーラは8歳になると母親に「髪の毛を切りたい」とせがむようになり、9歳になったカーラはピンクのタンクトップを脱ぎ、水色と白のストライプのシャツに着替え、近所の床屋で散髪する。
 散髪後のカーラはどことなく逞しく見えるようだ。母親は「カーラが女だろうと男だろうと、変わらず愛します」と優しい笑顔で語る。ちなみにカーラは今後、カルロスと名乗る事になるそうだ。驚くことに、カーラのいとこであるキャサリンは既に少年になってはいるが名前はキャサリンのままだという。この村でゲヴェドースがいかに珍しくないかがよくわかる一例だ。
サリナス村では高確率でゲヴェドースが誕生することからこの特殊な現象はこの地域で広く知られ、喜ばしいことと祝う住民たちもいる。だがしかしすべての住民が受け入れているわけではないのだ。
 思春期を迎え、身体が変わってきた前述のジョニーを見て「悪魔」や「汚らしい」などと言う住民が現れ、その卑劣な攻撃に対してジョニーは拳で闘うしかなかったのだと語る。たしかに、外見や声などの目に見える部分が大きく変わることは本人にはもちろんの事、周囲にも影響を与えることだろう。まして多感な思春期の子どもたちには受け入れがたいのかもしれない。

 ゲヴェドースはサリナス村に歴史的にいつも存在しているが、正式に発見・公表されたのは1970年代にアメリカ、コーネル大学のホルモン障害の分野を専門とする内分泌科医であるジュリアン・インペラート医師によってである。彼女はドミニカ共和国にある「少女が少年に変わる」という奇妙な噂を耳にし、現地を訪れてそれが事実だと確認した。
 それ以降、ゲヴェドースを学ぶために幾度かの調査が実施された。他に、ニューギニアやトルコなどの地域でもゲヴェドースは確認されているが、詳しく調査された記録は残っていない。
 少女として幼少期を過ごし、多感な思春期を少女から少年への変化を実感しながら暮らす。そして残りの人生を男性として送るというその人生は一体、どのように受け止められるのだろうか。家族や友人などの周囲にとっても一大事であろう。しかしこのサリナス村のように性的マイノリティもごく普通に過ごしていけるような世の中になってほしいものである。

TOCANA

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