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【閲覧注意】事故で「のっぺらぼう」になった男 ― 驚異の全顔面移植手術、全貌とは!?

近年、社会に定着しつつある「移植医療」だが、顔面の移植となるとその実施例は極めて限られる。2005年にフランスで世界初の部分顔面移植手術が行われてから、まだ10年の歴史しかないのだ。2010年には、世界初の“全顔面移植手術”がスペインで行われ、その後もアメリカなどで続いたが、まだ数えるほどの例しか存在しない。今回はその中から、米国で行われた全顔面移植手術の詳細についてお伝えしよう。

2011年3月、テキサス州フォートワース在住のダラス・ウィーンズさん(当時25歳)に対し、米国初となる全顔面移植手術が施された。建設作業員として働いていた彼は、高所作業車がふらついた時に頭が電線に触れて大ヤケドを負った。事故後は3カ月の昏睡状態に陥り、生死の境を彷徨ったという。

 22回の手術を経て何とか命は取り留めたものの、ウィーンズさんの顔面は完全に失われ、身体の別の部分から切り取った皮膚で全面が覆われることになった。口のほかは眼や鼻もなく、まるで“のっぺらぼう”のような平たい顔――。彼が人間らしい顔面を取り戻したいと切に願ったのは、当然のことだった。

そして満を持して実現した全顔面移植手術だが、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の医師や看護師、麻酔科医などで構成される30人のチームが、15時間以上をかけて行う大がかりなものとなった。ドナーから提供された顔面と、それを動かす筋肉と感覚神経がすべてウィーンズさんに移植されたのだ。手術直後の顔面には細かな切れ込みが多数存在したが、それが癒えた後、本人の顔面として90%機能するようになったという。しかし、ウィーンズさんによると、彼は単純に外見のためだけに手術を希望したわけではなかったようだ。

「(そのままだったら)3歳の娘のキスを感じることができません。キスをお返しすることだってできないのです」(ウィーンズさん)

 また、全顔面移植によって呼吸や会話、食事、本人の社会性にも少なからず良い影響がもたらされるという。手術を執刀したボーダン・ポマハック医師は、

「さまざまな見地から、顔面はとても複雑な器官なのです。それらすべてに対応しようとしているわけです」
「患者の状態は良好です。経過もすべて順調ですよ」

 と語り、ウィーンズさんの手術は成功したと自信を見せている。ちなみに、手術が行われた具体的な日時は、ドナーが特定される恐れがあるため公表されていない。なお、アメリカにおいて顔面移植を行うためにはドナー本人のほか、その家族からの同意も必要となる。

さて、ウィーンズさんの目は事故で完全に失われてしまった。しかし新しい顔を得た彼は、なんと視力の回復も諦めてはいないのだという。

「15年前、顔面移植はSFのような話でしたよね。じゃあ、次の15年では何が起こるというのでしょう。まだまだ私には時間がありますから」(ウィーンズさん)

 スペインで行われた世界初の全顔面移植手術では、2年後に移植した顔面に寿命がきてしまったという。そのような経緯もあり、今後ウィーンズさんは3Dプリンタ技術を用いた顔面再建手術を受ける構想も持っているようだ。医学とテクノロジーの進歩によって、身体に深い傷を負った人々の人生が、以前よりも明るいものとなりつつなる。

TOCANA

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